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独立行政法人 国際協力機構(JICA)

キーパーソンインタビュー

女性としてのキャリアの築き方や、ワーキングマザーとしていきいきと働くコツなど、働く女性のロールモデルになりうる方、もしくは女性が輝くための制度や施策を導入している人事担当者へのインタビューです。

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キーパーソン インタビュー

過度な無理はせず、自分との対話を重ねてコントロールする

QJICAで働く醍醐味について教えてください。

野村:アフガニスタンでは地方開発、職業訓練分野、ジェンダー関係をメインで担当していました。地方開発支援の一環で、世界遺産で有名なバーミヤンの一角で、灌漑(かんがい)用のため池を造るための支援を行っていました。近隣の5つの村が共同で造るプロジェクトだったのですが、それぞれの村は民族構成が異なることもあり、以前は争いが起きることもあったそうです。しかし、プロジェクトを通じて関係が改善し、何か問題が起きたらまずは話し合うようになりました。直接は関係のない日本が協力することで仲介役となって、異なる民族の関係改善、つまりは平和構築に貢献できたということに、私自身非常に感動したのを覚えています。

当時は農村に住む現地の方とお話しすることもあれば、関係省庁の副大臣クラスと意見交換しながら仕事を進めることもありました。さらに東京本部でアフガニスタン担当をしていたときも、世界銀行やUSAID(アメリカ合衆国国際開発庁)等の援助機関との連携推進などを通じ、自分の視野が広がっていったと感じています。いろいろな立場の方と一緒に働くことで、相手国が重層的に見えてくるというのはJICAの仕事の魅力の一つだと思います。おかげで、アフガニスタン研究で著名なニューヨーク大学の教授にJICAでの講演を依頼した際、有意義な意見交換ができたことで、仕事を通じて自分が成長できたのだなと実感しました。国際協力において、前提として「開発途上国のために何か良いことをしたい」という気持ちは必須ですが、それだけでは続かないのではないかと感じています。自分の視野が広がるとか、知的好奇心が刺激されるなど、仕事の結果が自分に返ってくるのが楽しいと思いながら働いています。

正直なところ、途上国といった特殊な環境で仕事をする場面が多いため、日本とは違う環境・考え方で仕事をするなかで、その違いを面白がれるかどうかが大切だと思います。同僚に聞いた話ですが、モンゴルの方と一緒に屋外イベントを計画した際に、日本人スタッフが雨天に備えて準備しようとしたところ、モンゴル人スタッフは「雨が降るなんて言うのは縁起が悪い」と言って特に準備しないのだそうです。ところが、いざ雨が降ると、なんの段取りもしていないのに、モンゴル人スタッフはスピーディーに連携して対処してしまう。見た目は日本人ととても似ているのに、物事の考え方はずいぶん違うようです。そんな「違い」を見聞きしたり、体験するのも、仕事の醍醐味の一つです。

また、さまざまな国の人と仕事をしていると、日本が世界からどう見られているのかを知ることもできます。そこで感じるのは、日本は基本的に海外から信頼されている、ということ。アフガニスタンでも政府高官から村の人々までさまざまな方と話をしましたが、「日本人だから信頼している」「日本だから一緒にやりたい」という話は何度も聞きました。日本人であることで損したことは一度もありません。これまで国際協力の道で頑張ってこられた先輩方が誠実に仕事をしてきた結果であり、感謝の気持ちでいっぱいです。

Q開発途上国かつ異文化という環境で仕事をするのは予想以上にハードなのではないかと思うのですが、ストレスをためないよう何か意識されていることはありますか?

野村:アフガニスタンなど治安の悪い地域では、行動制限をされているため自由に出歩くことができません。現地へ行く前に自分に誓っていたのは、決して過度な無理はしないということ。無理して精神的に参ってしまえば、周囲に迷惑をかけてしまうからです。緊急援助の現場などでも、目の当たりにした悲惨な状況について思うところはありましたが、うまくコントロールして翌日にひっぱらないよう意識していました。そういう意味で、自分との対話は非常に大切ですね。

またイスラム教国においては、現地の女性と直接話ができるのは女性だけということも少なくありません。女性であることのメリットを感じると同時に、同じ女性でありながら置かれた環境がこうも違うのかとショックを受けたこともありました。そんなとき、問題意識は持ちつつも、自分がやるべきことに冷静に取り組んでいけるかどうかが大切だと思います。

専門知識のみならず、柔軟性とバイタリティーも

Q女性が働く職場という意味では、JICAはどのようなところでしょうか?

野村:結論から言えば、恵まれた職場であると感じています。
私自身は2013年に結婚したのですが、30代半ばまではキャリア優先で、JICAに転職してからも大学院留学にチャレンジさせてもらうなど、自分のやりたいテーマを追い求めてきました。JICAの場合は修士号を持っていなくても十分活躍することができますが、専門的に勉強することでより広い視野を持って仕事ができるのではないかという思いがあり、どうしても越えたいハードルだったのです。

結婚後は、いかに仕事もプライベートも大切にしていくかという局面に入ったと感じています。ただ社内結婚ということもあり、夫も仕事に対して理解してくれているので、働くこと自体にジレンマを持たずに仕事を続けられそうです。今後は夫も私も海外赴任の可能性がありますが、JICAの場合は社内結婚も多く、どちらかが海外赴任になった場合のキャリアとプライベートの両立については先輩方の実例も参考にしつつ、考えていくことになると思います。多くはありませんが、同じ事務所で夫婦が働くという例も出てきているようです。

周りには、管理職で仕事と育児を両立している人もいます。子連れで海外赴任している人もいます。現在所属している広報課(課長1名含む)は女性ばかり4名ですが、私以外は全員ワーキングマザー。仕事と家庭を両立しているロールモデルが多いという意味で、恵まれている職場かなと感じます。男性の育休取得の事例もありますし、ワークライフバランスの好事例がどんどん増えていくといいですね。

Q国際協力に関心を持つ女性の方へメッセージをお願いします。

野村:海外赴任や出張の多さなどから考えても、結婚や出産などプライベートな面で越えなければならない壁が存在するのはたしかです。一方で、女性に向いている職業でもあると感じています。開発途上国で仕事をすると、思い通りにいかない環境でもへこたれずに柔軟性を持って業務を先へ進めていくことはもちろん、価値観の異なる人々と仕事をするため、相手の立場に立って物事を考え、動くことが求められるからです。

国際協力の仕事につくためには、専門知識が必要なのではと思うかもしれませんが、知識や仕事上のスキルは業務を通して身に付ければよいと思います。自分を取り巻くさまざまなハードルに負けず、諦めずに、自分が好きだと思うテーマを追求していくことで、道は開けていくのではないかと思います。

広報室広報課 主任調査役 野村 留美子
野村 留美子
広報室広報課 主任調査役

大学卒業後、日本マイクロソフト株式会社に入社。2006年、JICAへ転職し、国際緊急援助隊事務局、アフガニスタン駐在などを経て、JICAの研修制度を利用してハーバード大学ケネディ行政大学院で学び、修士課程を修了。現在は広報課において、JICAの活動を一般に広く伝えるべく活躍している。