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株式会社東芝

量子コンピュータから生まれた独自アルゴリズムで、金融市場を変革する

「人と、地球の、明日のために。」その壮大な経営理念を掲げながら、これまでに数多くの新しい技術を生み出し、イノベーションの実現を導いてきた株式会社東芝。今、同社の研究開発センターから、新しい革新的な技術「シミュレーテッド分岐マシン(SBM)」が世に出ようとしています。今回は、その技術の金融分野への応用を担うメンバーを募集するにあたり、研究開発センター所長の佐田豊氏、フロンティアリサーチラボラトリー(FRL)主任研究員の後藤隼人氏、コンピュータ&ネットワークシステムラボラトリー(CNL)主任研究員の辰村光介氏にお話を伺いました。

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募集期間:2019年10月17日(木)〜 2019年11月13日(水)

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未知のポテンシャルを秘めた「SBM」の誕生

東芝研究開発センターは、膨大な組合せパターンの中から最適な解を選び出す「組合せ最適化技術」において、世界最高速度・世界最大規模の最適化を実現する、全く新しいアルゴリズムを開発しました。この原理を実装したコンピューティングマシンを「シミュレーテッド分岐マシン(SBM)」と名付け、今後さまざまな分野での応用を計画しています。

現在、物流経路の最適化や創薬のための分子設計など、さまざまな分野において「組合せ最適化問題」の応用が進んでいますが、そのなかでも、東芝が最初に目を向けているのが、金融の世界。今回は、この全く新しい技術「SBM」を応用することで、金融市場を変革するような事業を生み出していく、金融業界のプロフェッショナルを募集いたします。

東芝、金融ビジネスへの挑戦

研究開発センター所長/佐田 豊

──はじめに、東芝がFintech分野での新規事業開発に取り組む背景について教えてください。

きっかけは、主任研究員の後藤と辰村の二人が中心となりSBMを生み出したことでした。SBMの最も大きな特徴は、大規模で複雑な問題を超高速に解けること。現場では「インテリジェント脊髄反射」と呼んでいますが、合理的な判断に基づく解を脊髄反射レベルの速度で出せる技術ということです。

大規模な問題を高速に解くことが価値を生むマーケットは多数ありますが、なかでも最も相性が良いのは金融分野だと考え、今回のプロジェクトを始動しました。SBMを活用することによって、金融取引を含む高速リアルタイムアプリケーションにおいて、組合せ最適化に基づく合理的な判断を瞬時に下し取引・アクションを実行するという、これまで実現しえなかった「瞬時最適応答システム」の構築が可能になります。

アプリケーションの内容はこれから具現化していく段階ですが、裁定取引や市場の短期予測と高速取引、ポートフォリオ最適化などに活用できるだろうと考えています。

──現在さまざまな企業が、量子コンピュータなどの最新技術を金融ビジネスに応用するための研究開発を進めています。そのなかで貴社の優位性はどこにあるとお考えでしょうか。

何よりもまず、学術的にも理論的にも全く新しいアルゴリズムをもとにした、世界最高レベルのパフォーマンスを発揮するSBMの存在です。この技術は今世界で最もユニークで高性能だと信じています。

また、革新的な理論を構築できる「基礎研究力」と、エッジコンピューティング、クラウドコンピューティング、ネットワークといった「システム実装」の豊富な技術基盤を持つことも、我々の大きな強みです。

ここに金融業界のエキスパートを迎え、それぞれが専門性を発揮しながらスピーディーに事業化まで持っていくことができれば、このプロジェクトは間違いなく成功すると確信しています。

イノベーションを起こすのは、いつだって「人」である

──今回、新たに金融業界からのプロフェッショナルを迎えるにあたって、どのような方に参画していただきたいとお考えでしょうか。

自分の持っている能力や経験を生かして新しい挑戦をしたいという、強いモチベーションを持っている人です。

今回のプロジェクトチームには研究所内のさまざまな部署から人材が集まっていますが、その全員が「自分も参画したい」と自ら手を挙げた、熱い情熱に溢れるメンバーです。いつだって、イノベーションはこういった「人」からしか起こりえません。

同じように、SBMの革新性や可能性の大きさに魅力を感じ、「これを使って新しいビジネスを生み出したい」という思いを持った人が、きっと金融の世界にもいるはずだと考えています。

──今回に限らず、貴社は、過去を振り返っても革新的な製品や技術をいくつも生み出されていますね。

東芝は、新しいことへの挑戦に対して、懐が深い企業です。今でこそ、勤務時間中の一定時間を好きな研究に使える「15%ルール」「20%ルール」を導入する企業は珍しくありませんが、東芝ではこれを30年以上前から続けています。さらにそのアイデアを発表して討論する場を用意したり、場合によっては一定のサポートのもと試作を進めたりすることもあります。

このように、研究者や技術者がそれぞれオリジナルの研究に時間を費やすことを許容されているからこそ、東芝は次々と新しいイノベーションを起こせてきたのだと思います。今回のアルゴリズムも、もともとは本業以外の研究から生まれたものですから。

──未来の仲間へ向けて、所長からメッセージをお願いします。

現在、Fintechの分野で使われる技術は、そのほとんどが海外発のものだといわれています。そんななか、私たちがまだ世界にない新しい技術をもって、同分野で旗を揚げることができれば、市場全体に大きなインパクトを与えることができますし、同時に、日本経済全体にも活力を与えられるのではないかと思っています。

これまで培ってきた力で、金融のマーケットを変革したい。そうした強い思いをお持ちの方は、ぜひ私たちと一緒に挑戦しましょう。

量子コンピュータの「古典化」で新原理のアルゴリズムを発見

FRL主任研究員/後藤 隼人

──後藤さんがSBM開発の実現に至るまでの経緯について教えてください。

はい、もともと私は物理学を専門としており、以前から量子コンピュータの研究を進めていました。量子コンピュータの応用先の一つとして「組合せ最適化問題」があり、3年ほど前に「量子分岐マシン」と名付けた新しい量子コンピュータを理論的に提案しました。そのとき、量子分岐マシンの有用性を示すための比較対象として、量子分岐マシンを古典化した「古典分岐マシン」も同時に提案しましたが、当時はそれを有望視していませんでした。

それから1年半ほどたったころ、他社が量子コンピュータの新しい技術について発表を行いました。その技術は、量子か古典かは不明でしたが、優れた性能を誇っていました。それを聞いたとき、「その発表で解いていた組合せ最適化問題を古典分岐マシンで解いたらどうなるだろうか」と考え、実際に試してみたところ、想像以上に高い性能を発揮することが分かったのです。それが今回のアルゴリズム発見の始まりです。

その後、改良を重ねて生み出した今回のアルゴリズムは、量子力学の世界でしか成り立たなかった原理を「古典化」したことで生まれたものだといえます。

最近のデジタルコンピュータの多くは並列処理によって高速化を実現していますが、このアルゴリズムはまさにその並列処理を最大限活用して性能を発揮します。そして詳しく調べていくうちに、専用設計の計算機に実装することができれば上記の量子コンピュータに勝る性能を実現できることが明らかになりました。

そのときタイミングよく出会ったのが、コンピューティングの実装のプロである辰村です。上記の結果を話してみたところ、ものすごく興味を持ってくれました。そこから、私たちのSBM開発が始まったのです。

──この大きなプロジェクトのきっかけは業務外の場だったのですね。

はい、当時は全く別の部署でしたし、会話をしたのもそれが初めてでした。しかし、所長の佐田も言うように、東芝では好きな研究に一定時間を費やすことが許容されています。その時間を使い、最初は二人だけの研究として開始。やがて専用機が完成すると、想像していた以上の性能を発揮してくれました。SBMは、部署の壁を越え、専門領域の異なる二人で協力し合えたからこそ生まれた技術といえるでしょう。

SBMの性能は、量子コンピュータの約10倍

──SBMがいかに革新的な技術なのか、量子コンピュータと比較したときのメリットも含めて教えてください。

何よりも大きな特徴は、前述した、これまで最速だった他社の量子コンピュータの約10倍の性能を発揮できることです。それも、たった一つのデジタル回路のチップで実現可能となります。これによって既存のシステムへの適用、社会実装が圧倒的に容易になるほか、運用コストや安定性の面でも大きなメリットがあります。

量子コンピュータはまだまだ開発途中であり、利用するためには大規模な設備も必要で、既存のシステムに組み込むには、現状では多くのハードルがあります。しかし、デジタル回路や既存計算機だけで各分野の組合せ最適化問題を解けるとなれば、現在の社会システムやビジネスに大きなインパクトを与えられるはずです。

──さらに将来的にはどのような可能性があるとお考えでしょうか。

全く新しいアルゴリズムなので、その可能性は無限大です。今はまだ私たちの想像も追いつかないような分野まで、活用の場が広がっていくことも期待しています。

ただ、現時点ではっきり見えているのは、複雑な問題を高速に解けるという特長です。そしてその「スピード」が最も役に立つと考えたのが金融分野で、事業化の実現に最も近い道だと考えています。

まずここで一つの成功例をつくることで、SBMの可能性はさまざまな分野へ広がっていくと確信しています。

金融ビジネスの夢を抱くプロフェッショナル人材へ

CNL主任研究員/辰村 光介

──今回、新たに金融の世界からプロフェッショナルを迎えるに至った背景・理由について教えてください。

革新的かつ実践的な情報システムを構築するためには、「ドメインスペシフィックコンピューティング」という考え方がますます大切になっています。これは、汎用(はんよう)性よりも特定分野の深い理解とそれに基づくカスタマイズがより重要であることを意味します。

今回のプロジェクトでいえば、後藤は理論の専門家、そして私はシステム実装の専門家。そしてこれを特定のビジネスに応用していくためには、金融の世界の専門家が必要だと考えました。私たち情報技術側と、金融ビジネス側のエキスパートとのコラボレーションによって、東芝の新しい金融ビジネスを進めていくということです。

外部の方との協働で進めることも検討しましたが、やはりコミュニケーション量の面でも情報開示の面でも壁があり難しいと感じました。東芝に入っていただき、密に意見交換しながら進めてこそ、今回のプロジェクトは成功するだろうと思います。

──金融の世界で「ビジネスのアイデアはあるものの、現在の技術では実現が難しい」と考えていた人にとって、SBMという革新的な技術を使えるのはとても貴重なチャンスといえそうですね。

はい。むしろ、そういった実現したくてたまらないアイデアを持っている方でないと参画していただくのは難しいかもしれません。

後藤の考え出したアルゴリズムと、それを実装したSBMが革新的な技術であるのと同様に、この技術を「何に」「どのように」使うかという応用の領域においても、これまでにはなかった新しいイノベーションを起こさなければなりません。それこそまさに、金融領域のエキスパートの方に期待していることです。

場合によっては、私たちに「今のソルバ・システムでは実現できないから、ここをこう変えたい」といった要求をしていただいても全く問題ありません。プロジェクトチームには頼もしいメンバーがそろっていますし、そういった要望には全力で応えます。

量子コンピュータを含む革新的な組合せ最適化問題を解く技術は、次のテクノロジードライバーとして金融業界でも注目され始めていますし、その先頭を切ってリードしていくことはとても貴重な経験・価値になるのではないでしょうか。

金融業界を変革する、共創型プロジェクト

──今回参画する方にお任せする、具体的な役割について教えてください。

金融ソリューションの研究開発チームの一員として、実際のソリューションにつながるアルゴリズムを提案し、コアとなる問題の定式化および制約・速度条件の設定を行う業務を担当していただく予定です。たとえば、対象となるのは、裁定取引、市場の短期予測と高速取引、ポートフォリオ最適化、動的リスクアセスメント、取引コスト最適化などです。

一方、最適化ソルバ技術、システム実装、ハードウエア実装といった技術面は、私たち既存のメンバーが担当します。

また、組合せ最適化問題は数学的に定式化されるものですが、今回の技術を使ううえでは、その問題をさらにイジング問題形式に変換するために、数学的に高度な工夫が必要になります。最初はこの工程を私たちがサポートしますが、徐々にお任せしていきたいと考えています。

──どのような経験やマインドを持っている方がマッチするでしょうか。

トレーディングなどの金融アルゴリズムの開発やそのソフトウエア実装の実務経験のある研究者、技術者の方が当てはまると思います。

マインド面でいえば、理論物理、数学、オペレーションズ・リサーチ、計算機科学など、さまざまな分野の研究者との協働でプロジェクトを進めるため、自立しながらも協調性の高い方が望ましいです。

──将来、ともに働く未来のメンバーへメッセージをお願いします。

このプロジェクトには、「金融業界に大きなインパクトを与えたい」「未来の社会に貢献したい」という挑戦心を持ったメンバーが社内から集まっています。乗り越えなければならないハードルは決して少なくないですが、私自身これまでの開発者人生のなかでも一番といっていいほど、毎日楽しみながら研究開発に取り組んでいます。金融ビジネスの未来に向けて、一緒に議論するのを楽しみにしています。

募集職種

  • 研究開発センター 研究開発【金融分野への高速・大規模な組合せ最適化問題ソルバの応用技術】
    • クオンツアナリスト 金融システム
    • 神奈川県

    【業務内容】 高速・大規模な組み合わせ最適化問題ソルバを応用する金融事業/金融技術開発事業において、研究開発業務をご担当いただきます。 金融システムを含む産業システムの生産性を高めるための課題の多く(最適経路探索、ポートフォリオ最適化、マッチング,配置最適化、スケジューリング、など)は、膨大な選択肢の中から最適なものを選択する組合せ最適化問題に帰着されます。今般,この組合せ最適化問題を高速に解く新しい解法が次々と開発されており,金融取引などの超高速なリアルタイム応答を要求されるシステムにおいても、最も合理的な判断を瞬時に下しそれに基づいて取引アクションを決定することが出来るという新しい可能性が生まれています。革新的な組合せ最適化問題のソルバ技術を近年デジタル化が進む金融分野に応用することで,金融システムのさらなる効率化・安定化・民主化に貢献することを目指します. 【業務詳細】 ◆新規組合せ最適化問題ソルバ技術を応用した金融ソリューションの研究開発(問題定式化と制約/速度条件の設定) ◆実際のソリューションにつながるアルゴリズムを提案し,実際にソフトウェア実装し検証する. ◆例えば、次の事項に関係するアルゴリズムを発案・開発する 1.裁定取引(為替,株式,先物/現物,etc) 2.市場(為替/株式)の短期予測と高速取引 3.(リアルタイム)ポートフォリオ最適化 4.動的リスクアセスメント 5.取引コスト最適化 ◆システム実装,ハードウェア実装,最適化ソルバの開発は含まれない.