天草市起業創業・中小企業支援センター「Ama-biZ（アマビズ）」

天草市起業創業・中小企業支援センター、通称「Ama-biZ（アマビズ）」は、全国に数カ所ある公設民営の無料地方創生コンサルティングのひとつです。

「Ama-biZ」は天草市の経済活性化を目的に設立されました。先行成功事例である富士市産業支援センター f-Biz（エフビズ）等のサポートを受け、商工団体や金融機関と連携しながら、天草のすべての事業者をサポートし、新規創業や売り上げ向上、雇用につなげます。

富山県出身で、東北大学を卒業した私が天草に来たきっかけは、6年前にさかのぼります。外資系コンサルティング会社、企画会社、IT企業、住宅関連会社。東京でせわしなく働くなかで、転機が訪れたのは2011年、東日本大震災が起きたときでした。当時、私の家族は臨月の妻と娘1人でしたが、都市圏のもろさが骨身にしみ、富山の実家に避難しました。4月には次女が生まれ、子育てに適した環境を探していたところ、友人からつながった縁で熊本の南阿蘇を訪れることになりました。雄大な自然と食の恵み。湧水が流れ、人々が心地よさそうに過ごしている。「これこそ地に足がついた生活だ」と思い、知り合いのいる南阿蘇に移住することを決めました。

廃校利用や自然エネルギーのNPOに勤務しながら、ITで東京の仕事もしつつ、林業や、畑で野菜を育てる「半農半X」生活にチャレンジしました。飲料水は湧水、食べ物は近所の人たちからいただいたりもするので飲食に困ることはありません。4人家族、月収は15万円前後。田舎暮らしには十分な金額です。少ない収入でも、東京にいるときより生活は確実にゆたかになったと感じました。

天草に移住したのは2015年のことです。地元の主な経済基盤となっていた水産業をはじめ、さまざまな産業で雇用を増やし、天草を元気にしようという「Ama-biZ」立ち上げの公募に応募、選考に通り、天草での生活がスタートしました。

「Ama-biZ」では、天草市の事業者の相談をすべて無料で受け付けています。相談件数は月平均128件（2016年度）、2015年4月の開設から2017年3月までの累積相談件数は3,169件にのぼりました。相談を受けた事業所数は650で、天草市の法人数の1割以上を占めます。

天草市南西部・牛深にある「民宿一二海」では、開業して2年目の2015年からサポート。「民宿一二海」でしかできない「体験」という強みを明確にしてターゲットを絞り込み、SNSやパンフレットでPRした結果、２年後には宿泊者数を前々年の3倍に伸ばすことができました。農林水産業の生産と加工、販売を一本化する農家の「6次産業化」は地方創生のキーワードのひとつです。天草でも商品開発や販路開拓を進め、ブランディングやプレスリリース作成を支援して売り上げ拡大の成果を上げています。

他にも、天草と熊本空港、福岡空港、大阪伊丹空港を結ぶ天草エアラインの機種交代に伴う「ありがとう＆ようこそ みぞか号プロジェクト」では、地元の事業者を募って商品開発や地域振興、情報発信を提案し、「Ama-biZ」発の異業種連携プロジェクトとして成功を収めました。天草の人々は大らかでやさしく、事業に対してはとても積極的でポジティブな方ばかり。私たちの仕事は相談者のモチベーションを上げ、適切な支援で事業を成功へ導くことです。結果につながったときは、喜びややりがいを強く感じることができます。

天草に移住してから、QOL（Quality of Life）は格段に上がりました。現在では1カ月に10名くらいずつ移住者が増えており、週末はイベントやお祭りでにぎわっています。一部の海域ではイルカの群れを見ることができ、観光客も増えてきました。仕事もプライベートも大切にしながら、消費ばかりではない自立したクリエーティブな生活ができる。天草では理想のライフスタイルを実現できます。

しかし一方で、知られていない自然や歴史遺産、食の資源はまだまだたくさんあります。連携している他の地方の中小企業支援団体にはない「フードアドバイザー」を設置したのは、天草のゆたかな食材に産業成長の伸びしろがあると考えたからです。天草市を支える水産業では加工、販売までを生産者もしくは協業で担う「6次産業化」が課題です。売りたい商品があっても売る場所が足りない。商品の販路開拓がひとつの鍵となるでしょう。

相談者と一緒に悩み、知恵を絞り、夢を実現する。これらに対して好奇心旺盛なパートナーを探しています。地方創生の最前線で新しい土地の魅力を発見し、発信する仲間が増えれば、天草はより輝くと確信しています。